1つめは本学における社会貢献の黎明期である2000年におこなわれた、エリトリアに自転車を贈るイベントです。発案した教員から手伝いを頼まれて、当日は学生たちが本学から晴海ふ頭までサイクリングするのを車で伴走しました。学内の放置自転車を集めて整備するところから始めて、最終的に40台の自転車を無事にピースボートの大型船に載せるところまで、あれだけのことがよくできたものだと今更ながら思います。個々の教員によるこういった取り組みが基になって、ボトムアップで社会貢献活動という教育の仕組みができあがっていったことは、忘れないでいたいところです。 その後、活動の中心を担っていた教員の退職や、支援室のコーディネーターの交代あるいは欠員などがあり、やむを得ず実習先を整理して細々と継続するのがやっとという時期もありました。そこを何とか凌いで、コロナ禍の影響も乗り越えて、今また徐々に社会貢献活動が活発化しているのは大変喜ばしいことです。その中で、活動に参加する学生たちには、それぞれの役割を果たす際に自身が大学で学んだ専門分野の知識や技術を何らかの形で役立てる意識を持ってほしいと願っています。それによって、授業科目としての社会貢献活動の原点である「サービスラーニング」が機能している、と言えると思いますので。 次は、この活動の歴史の中で最も華々しいといってよい出来事、文部科学省の「質の高い大学教育推進プログラム」いわゆる教育GPに2008年度からの3年間採択されたことです。3回目の申請で、それまで落とされていた書類審査を通過してヒアリングに臨むことになり、ちょうどその年に工学部長だった私もメンバーに加わりました。当時は多くの教職員が関わって活動全体が非常に活発な状態であり、彼らの努力に報いるためにも何としても申請を認めてもらわなければという気持ちでいたことを今でも思い出します。そこからの3年間が、これまでの社会貢献活動の歴史の中で最盛期だったと言えるでしょう。 社会貢献活動が20周年の節目を迎えられたのも、これまで支えていただいた学外実習先の多くの方々のご厚意と携わってきた教職員の努力、そして参加してくれた学生の皆さんの意欲があったからこそです。末筆になりましたが、これらに対して改めて心からの感謝と敬意を表したいと思います。今後の本活動のますますの充実を期待しています。 20周年特集私はこの大学に勤めてかれこれ30年になりますので、社会貢献活動のスタートから現在までをずっと見てきましたし、その時々の立場や状況に応じた関わりもしてきました。ですので、2022年度の報告書に20周年の記念ページが設けられ、これまでの活動をまとめて振り返ることができるのを、とても嬉しく感じています。せっかく紙面をいただきましたので、私自身の思い出で特に印象に残っていることについて、いくつか書いてみようと思います。 学長 木枝暢夫 当時の活動の中には、工学部の特色を生かした取り組みとして「福祉ものづくり」がありました。特に、横浜市にある社会福祉法人との協働により、障害をもつ方々の様々な作業を支援する装置や機器を一人ひとりの状態やニーズに合わせて作成する取り組みは、一般的な社会連携活動を超えた深い学びを学生たちにもたらしてくれたと思います。私も、何度か施設にお邪魔して色々なお話を伺う中で、大学ができる社会貢献の可能性について考えさせられることが多くありました。 31 社会貢献活動20周年に寄せて
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