学報85号
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03※2023年6月30日をもって終了いたしました。子ども達のために平和を守る湘南工科大学に対する信念昭和17年生まれの私は、終戦時はまだ3歳だった。防空壕に逃げながら生き延びて、今まで日本が平和だったからこそ、現在81歳の私がある。今の日本はどうだろうか。防衛費を増額し、戦争に備えようとしている。国民からも憲法改正の声が大きくなり、日本という国が大きく揺れ動き出している。最も重要なことは、戦争はいかなる理由があってもやってはいけないということである。310万人の戦没者の犠牲の上に現在の平和があることを、決して忘れてはいけない。そして、ここにいる学生達のためにも、将来ある子ども達のためにも、日本はずっと平和な国であるべきだ。戦後80年近く守られてきた日本の平和は、これからも守り続けられなければならない。本学の大学生の朝食は、毎朝無料としている。これにかかる費用は、私の寄付により全額賄っている。学納金も工科系大学では安い方であるし、寄付金に関しても積極的に求めるようなことはしていない。湘南工科大学を50年率いてきたので、だいぶ財産を築いたのだろうと思う人もあるかもしれないが、私は金儲けのためにこの大学を立て直したのではない。日本の教育のために、次世代を担う若者達のために、信念を持ってやってきた。だからこそ、これまで私は幾度となく大学に対し寄付を行ってきたし、今回の60周年記念という節目においても多額の私財を寄付した。しかし、寄付のことをひけらかすようなことは決してしたくはない。何も言わず今までやってきた。それが糸山英太郎だ。これから社会へ翔び立とうとしている若者に対し、少しでも日本のことを考える機会になればと私なりに願いを込めて、講演当日に日本国旗を配りましたが、やり方が古臭いとみえて学生諸君の出席人数は芳しいものではありませんでした。私が考案した湘南ブレックファスト※も、2014年から開始して今年度で9年目を迎え、累計168,525食(集計期間2014年10月23日〜2023年6月16日)の朝食を無料で提供してきましたが、皆さんは食べさせて貰って当然と思っていませんか?他大学で行われている朝食木枝暢夫学長は、本学のこれまでの歩みを懐かしい写真とともに振り返り、聴講していた在学生や卒業生からは歓声や笑みなどがあふれていました。新設された情報学部の特徴や学びについても詳しく説明し、これからのDX時代に求められるリスキリングに向けた話題の提供や技術紹介も行いました。湘南工科大学は、これからもさらなる発展を目指してまいります。来場者から寄せられた感想― 近隣の方の参加が多く、地元に愛されている大学ということが分かりました― 湘南工科大学の素晴らしさを改めて認識しました― 懐かしい写真が見られてよかった― 湘南工科大学のこれまでの歩みがよく分かりましたサービスが、学費の一部や父母会の会費などで運営されているのに対し、本学の湘南ブレックファストは私個人の寄付金によって100パーセント賄っています。これは、費用を誰が支払っているかのみならず、食材を作る人、流通に従事している人、調理をしてくれる人を含めた多くの人達によって諸君の学生生活が支えられていることに想いを馳せてくれることを期待したからです。ただ、人から助けて貰ったにも関わらず、それを当たり前のものとして受け止めて感謝の気持ちを持てないようでは、社会人として失格だということを学生諸君には肝に銘じていただきたいと思います。そして、こうした社会人としての常識を重んじる素地が前提にあってこそ、専門教育が意味を持つのであり、教育機関の場で人間性が軽視されるようでは、真の意味で「社会に貢献する技術者」を育成することは到底困難であろうことを、教職員には改めて認識いただきたいと思います。講演でも述べましたが、日本を、そしてこの大学を良くしようと今まで精一杯、汗を流してきたので私に悔いはありません。長年、学生諸君の一人一人と握手をしながら激励をしたり、若者の生の声を聞きながら意見交換も数多く行ってきました。体力の許す限り、最後の最後まで働き続けるのが私の信念ですが、さすがに半寿を迎えそれも困難となってきました。これからは私の教育哲学、信念を受け継いだ先生方の活躍に期待し、今後は少し離れたところから大学を見守ろうと思います。求められれば手助けしたいと思いますが、細かい事までとやかく言わず静観するつもりです。50年近く背負ってきたものから解放されたという気持ち、現場で頑張っている皆さんに申し訳ない気持ちなど様々な感情がありますが、その中には心配する気持ちもあります。学生諸君には、今与えられている環境を当然と思わず、感謝の気持ちを持って精進して欲しいと思います。教職員には、人の心を、学生の心を掴むような魅力的な、情熱的な教育者であって欲しいと思います。81歳の私がこれだけ頑張っているのだから、若い学生諸君や教職員ができないことはないはずです。輝かしい日本の未来を、輝かしい湘南工科大学の未来を願ってやみません。 60周年記念ー学長講演

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