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機械工学科 大見 敏仁 准教授


水素社会を支えるインフラづくりに貢献したい

[研究テーマ] 水素脆化機構の解明および動脈硬化・動脈瘤診断装置

鉄の破壊、強度に関する研究への高いニーズ

私が学生時代に所属していたのは、主に「金属の破壊と強度 」のテーマを扱う研究室でした。
鉄は身の周りのあらゆるモノづくりに関わる材料であり、今後も鉄の重要性が変わることはないでしょう。この鉄の破壊、強度に関する研究にしっかり取り組めば、将来仕事を失うことはないと学生時代の私は考えたのです。指導していただいた大学時代の恩師はとても優しく、分かりやすい授業でした。こうした恩師との出会いも重要だと思います。水素脆(ぜい)化というテーマは研究室の先輩が取り組んでいたもので、私が引き継いだ格好です。

現在に至るまでの20年にわたり水素脆化に取り組むことになろうとは、実のところ思ってもみませんでした。研究室では、金属疲労についてシミュレーションを行う手法を学びました。シミュレーションには数学の知識がとても役立つことが分かり、大学4年で初めて数学の重要性を感じたことを覚えています。

水素脆化という課題に低コストの対策法を確立する

私たちは、クリーンな次世代エネルギー「水素」を使った社会インフラを整備するための研究に取り組んでいます。

水素を利用した代表的な乗り物といえば燃料電池自動車(FCV)であり、水素を供給する水素ステーションの普及も進んでいますが、立ちはだかる課題が「水素脆化」。金属が水素に触れると次第に脆(もろ)くなり、破壊に至るのが水素脆化です。そのメカニズムはいまだ解明されておらず、確かなことは「水素ガスに金属が触れることにより脆化が進むこと」のみ。ステンレス鋼などの高価な材料を用いればこの問題をクリアすることは可能ですが、それでは水素エネルギーのさらなる普及は進みません。

低コストの鋼材による水素ステーション建設を実現するため、理論式を用いたコンピュータシミュレーションによって水素の振る舞いを予測し、脆くなる箇所を定期的にメンテナンスすれば水素脆化はクリアすることができるでしょう。

AIを使った画像解析・診断に挑む

発展的な取り組みとして、コンピュータによる「機械学習と画像認識」があります。

き裂が入った金属の画像をコンピュータに認識・解析させる、いわゆる「AIを使ったディープラーニング」という手法を確立することが目的です。き裂が入った金属を人間の目で見ても、ダメージの入り具合や水素脆化の程度は分かりません。将来的に、画像解析によって診断できるようにしたいですね。同様の取り組みでは、ダムや橋、高速道路といった建造物について、ドローン搭載カメラや車載カメラで画像を撮り、老朽化している箇所の解析を行うという試みが始まろうとしているところです。

現在、私たちは水素脆化の判定に適したディープラーニングの仕組みや研究の進め方について、研究室の学生たちとともに探っています。AIを用いた研究では、ほかに「AIで自動運転するRCカー」というテーマでも取り組んでいます。皆さんもぜひ、私たちと新しいテーマに挑戦しましょう!
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