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工学部機械工学科
機械工学 × モビリティ
電動アシスト四輪自転車を協働プロジェクトで開発
機械工学要素がギュッと詰まったモビリティ
自転車は、自分の身体を使って操作する身近なモビリティであるのと同時に、「機構学」「メカトロニクス」「機械力学」「材料力学」「材料強度学」などの要素がギュッと詰まった、機械工学を学ぶのに最適な教材です。
工学部 機械工学科では、野中研究室、稲毛研究室、大見研究室と総合デザイン学科プロダクトデザイン分野の研究室との合同で、電動アシスト四輪自転車の開発プロジェクトに取り組んでいます。1年次で学ぶ製図・CADの基礎や機械加工技術をベースに、その後積み上げていくさまざまな知識と技術を有機的に組み合わせて、4年次ではかなりの点数の部品すべてを3次元CADでモデル化、アセンブリ(組立)し、干渉チェックや構造解析をしながら設計します。自転車は、そのままでは押すと転がるだけのタイヤが付いた構造物です。ペダルを漕ぎ、その回転がチェーンによってリアシャフトに付いたギアに伝わりタイヤが回転する、という一連の動作の検証はすべて組み上げないとできません。“動く”自転車を完成させるのは一筋縄ではいきませんが、モノづくりの醍醐味を存分に味わうことができるプロジェクトです。
社会人に必要な
ビジネススキルもアップ
本プロジェクトは、2021年の山梨県北杜市からの依頼がきっかけでした。「日本遺産に認定された八ヶ岳山麓に点在する縄文遺跡群を巡るための乗り物を開発してほしい」という内容を受け、電動アシスト四輪自転車の開発がスタートしました。自転車のデザインコンセプトや全体のスタイリングは、企業のデザイン部の方々をアドバイザーに迎えて総合デザイン学科が担い、車両の設計や構造解析、製作は機械工学科の3研究室が担当。「安全安心に乗れる」「ここ(現地)にしかないリアルな体験が楽しめる」「オリジナリティのあるデザイン」という3つのニーズに見事応えた試作車が完成しました。その後、湘南工科大学ならではのプロジェクトとして定番化され、ターゲットユーザーやコンセプトを変えながら、2022・2023年度と1台ずつ開発しています。
北杜市向けに開発した1台目は、インバウンドやファミリー層がのんびりと地方を観光するためのモビリティとして、快適性を重視しドライブユニットにギアを内蔵。2台目は、湘南エリアを訪れる女性観光客をターゲットに開発しました。道幅が狭く交通量の多い公道でも移動しやすい普通自転車サイズにし、ギアチェンジ機能がない代わりにアシストのパワーを切り替えられるように。爽やかなペールグリーンのカラーリングが特徴です。
本プロジェクトは、機械工学を実践的に学べるだけでなく、自治体や企業の方、地域の方と関わることも多く、言葉遣いや身だしなみなど社会人の第一歩となるビジネスマナーを身につける機会にもなります。
学科を越えた学生との
刺激的な協働作業
他学科の学生とチームになり進める本プロジェクト。共通言語は、使用する3次元CADだけ。CADデータの作り方やモノづくりの経験、モチベーション、こだわるポイントなど、すべてが異なるメンバーたちです。だからこそプロジェクトの過程はとても刺激的で、多くの学びを体感できる時間になります。
例えば、ほかの学生から自分のイメージとは異なるアイデアを提案されたとします。とっさに「無理だ」と思うような内容だったとしても、相手の提案を実現するために「どうすればできるか」を考えることで、新たな発見があったり、技術力が向上したり、画期的な構造が生まれるきっかけになったりもします。また、このプロジェクトでは機械設計とスタイリングデザインが密接につながっていて、それぞれの決定や完成を待たなければ次の工程に進めない場面も多々あります。各自が役割に責任を持ち、切磋琢磨しながら力を合わせて課題をクリアし、完成というゴールを切る達成感は何ものにも代え難く、その経験はその後の自信になるはず。卒業後、エンジニアとして社会に出た際にもこの経験が大いに役立つでしょう。今後、シニアや障がいのある方にも優しい電動アシスト四輪自転車の開発も見据えています。
さあ、モノづくりの“ワクワク”を一緒に体験しませんか?
X-Tech LaboratoryLaboratory
【 未来を創造する研究室がここにある 】野中 誉子 教授
それで保育所の砂場をひたすら掘って、下の方に粘土の層があるのを見つけて、さらに掘り続けていたら、「たかちゃん、お砂場をそんなに掘っちゃダメ!」と先生に怒られました。隅っこだから問題ないと思っていたので、びっくりした記憶があります。
就学前でしたが、誰にも相談せずに、丸めた泥だんごを下駄箱で陰干しして、何日間もかけて“育てて”いました。しばらくすると、泥だんごの表面の層だけがむけて崩れることを発見。水分が蒸発していくと、しっかりくっついていない一番外側の層がはがれ、しっかり定着している中の部分だけが残る。そこに「新しい土を重ねて、また陰干しして」を繰り返していました。最後の仕上げはサラサラの細かい砂がよいことを突き止め、それはどこにあるか、園庭の中をしばらく探索し、滑り台の途中のフチに細かい砂が溜まっていることに気がつきました。粗い砂はザーッと下まで流れていくのに、細かい砂は上の方にくっついて残っているのを見つけて、みんなと一緒に滑り台に並んで上がり、砂だけザーッと流して自分は階段を降りる......。「たかちゃん、危ないからやめなさい!」と先生に言われるような子でした。
無事にサラサラの砂を採集し、とてもきれいな泥だんごができたことを覚えています。
誰に教わるわけでもなく、一人黙々と作業する—。誰も一緒にやってくれなかったからですが、それが全然嫌じゃなかった。一人で遊ぶ(探究する)のは得意でした。
小学校に入ってからの得意科目は「国語」でした。小学2年生の春に腕を複雑骨折して外で遊べなくなったため、夏休み明けまで家で“物語”の本を100冊読破したことがきっかけです。掛け算の九九は、覚えることに何の意味があるのかが分からなくて、全然やる気が出ませんでした。「この子は算数が苦手かも」と見かねた親に塾に入れられたのですが、そこで「文章題」に出会って解いたら面白かった。問題文の中から数式になるものを見つけて、式を立てて、計算する。「解読して求める」というプロセスが楽しくて、それから算数が好きになっていきました。その後、中学までは国語の方が得意だと思っていましたが、数学と物理も好きだったことや、途中でもし進路変更するなら理系に進んでおいた方が、そのあとが楽かなと思い、高校では理系を選択。大学では機械工学を専攻し、FRP(繊維強化プラスチック)の研究をしていました。
「自分の食い扶持は自分で稼げ」「自由な選択は経済的に自立してこそ」が家訓でした。共働きの両親を見て育ったので、働き続けるイメージを持ちやすく、工学部でも特に機械系に進学したのは「将来仕事に困らない」と聞いたことも理由です。
社会が必要とする価値を提供することで、対価を得る。それが自信にもなり、生活のベースにもなると思っています。「働く」って大事なこと。だからこそ、好きなこと、得意なことを生かして楽しく働きたいですね。
世の中の、手や体で触れることができるものすべては、機械工学の知識と技術がないと存在し得ません。今、後継者不足もあり、機械系エンジニアのニーズはとても高まっています。今後も情報技術による新しいテクノロジーが次々に生まれていく中で、実際に触れられるモノを実現しようとする時、機械工学の知識と技術のあるエンジニアは絶対に欠かせない存在になります。機器に触れて、仕組みや構造を考えたり、自分なりに工夫をすることが好きな人は、機械工学に向いていますし、伸びしろが大きいと思います。
専門・研究分野
複合材料工学、感性工学
研究テーマ
素材・構造・ユーザの特性を考慮したスポーツ用品の開発、四輪電動アシストサイクルの設計開発
研究キーワード
スポーツIoT スポーツ用品の機械的特性評価 ユーザビリティ評価