湘南から未来へ

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工学部 電気電子工学科工学部 電気電子工学科

工学部電気電子工学科

Electrical and Electronic Engineering

電子情報通信 × 次世代無線システム

情報社会に不可欠な
高周波デバイスの研究

現代社会と私たちが向かっていく未来

現代社会では今、目覚ましい速さで情報化が進んでいます。IoTで人とモノがつながったり、AIやロボット技術による支援が広がったりと身近な生活の中にもさまざまな変化が起きています。そうした中で現在、日本が目指しているのが「Society5.0」という未来社会の実現です。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)の融合によって、経済発展と社会課題の解決を両立し、一人ひとりに合ったきめ細やかなサービスの提供などを通じて、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができる社会です。これは「誰一人取り残さない」社会の実現を理念に掲げるSDGsの柱にもなっています。

期待される、さらなる高速化と大容量通信

「Society5.0」の実現に向けて鍵となるのが、次世代移動通信システムBeyond5G(B5G)。2030年頃の実用化を目指して研究が進むこのシステムによって、通信の速度が5Gの約100倍になるともいわれており、さらなる高速化・大容量の通信が可能になることが期待されています。これには、広い周波数帯域にわたって情報を増幅する技術が必要になります。

工学部 電気電子工学科では、このB5Gに対応する小型で超広帯域の周波数に対応した高周波デバイス(増幅器等)の研究を行っています。周波数とは1秒間に振動する「波」の数のことで、高い周波数ほど広い帯域が使えるので、同時にたくさんの情報を送ることができます。一方で、高周波デバイスはそれぞれ特定の周波数でしか動かないという特性があります。例えば、周波数が2GHz(ギガヘルツ)のデバイスはその範囲でしか動きません。今は周波数ごとにデバイスが必要ですが、もし超広帯域な周波数を1つのデバイスでカバーできたなら――。思い描く未来の高周波デバイスは汎用性やコスト面など、多くのメリットを私たちにもたらしてくれるはずです。
これらの研究を進めていくために湘南工科大学では、大学としては珍しい、開発した増幅器が最適な設計になっているかを評価できる高周波評価システムを構築しています。総務省および国立研究開発法人情報通信研究機構の研究開発プロジェクトへの参画なども通じて、最先端の課題に取り組んでいます。

無線電力伝送技術の拡張に挑戦

もう一つ取り組むのが、無線電力伝送技術の研究です。無線電力伝送技術のうち、電磁誘導の原理を用いて電気を送る「電磁誘導方式」はすでに確立されており、身近な実用例としては置くだけで充電できるスマートフォンの充電器や、ロボット掃除機の充電ステーションなどが挙げられます。これらは便利な技術ですが伝送距離が数センチメートル程度と短い、という弱点を持っています。この伝送距離の弱点を克服するには「磁界共鳴」などの方式が提案されていますが、「共鳴現象」を利用しているため極めて精度の高い制御が必要になります。研究室では、伝送距離に依存せずに長距離伝送が可能になる、無線電力伝送技術の研究を進めています。
こうした技術を組み込んだ未来の無線電力伝送システムに期待されているのが、IoTに代表されるセンシングシステムや、EV(電気自動車)、人工衛星内機器、工場内、家庭内などの電気機器およびシステムへの電力供給です。駆動回路を敷設した道を走るEVに無線で電気を送れたり、膨大なセンサーの電源回線が不要になったりと多くのメリットが期待されます。

工学部 電気電子工学科では、無線電力伝送技術の「拡張」に目を向けて、IoTセンサーに長距離から電力を送る研究を進めています。数メートル離れていても電力が送れたら、よりフレキシブルなシステム構築が可能になるはず。そして、場所を選ばずに、電源やセンサーを配置・増設できるスマートオフィスやスマートハウスも実現できるかもしれません。
より良い未来社会の実現に向けて、一緒に挑戦しましょう!

X-Tech LaboratoryLaboratory

【 未来を創造する研究室がここにある 】

工学部 電気電子工学科

松永 高治 教授

星に興味を持ったのは小学生の時です。天体望遠鏡(「ニュートン式反射望遠鏡」のようなもの)を友達と一緒に作り、よく天体観測をしていました。星をずっと観ているような子どもでした。中学時代は天文部に所属。星が好きで、理科が好きで、「何でそうなのかな、知りたいな」と興味が広がっていく中で理系に進んでいました。数学も好きで、きれいに証明された数式を見ると感動したものです。そこから物理学を専攻し、以来ずっと理系人間の“物理屋さん”です。

物理学の中でも、原子・分子といった小さな世界の物理現象を学ぶ物性物理学を専攻し、実際に原子・分子レベルで何が起こっているのか理解が深まる中で、「そうか! それでトランジスタ、いわゆる半導体デバイスっていうものがあるんだな」と、物性物理学の延長にあったデバイス研究につながっていきました。世の中の暮らしを大きく変えた物理学の成果が、まさにトランジスタです。

大学卒業後は、電機メーカーの研究所に所属し、無線系デバイスの研究を行っていました。無線系デバイスから半導体デバイスへとつながっていき、現在は高周波用半導体デバイスの研究に取り組んでいます。生涯数式を追う学者肌の人もいますが、私はもう少し、学びを“世の中に役立つもの”として還元したいという思いがあり、そこに興味があります。

物理や数学を理解するには、幼い頃から好きだった天体の勉強が非常に役立ちました。「星ってきれいだな」と思うところから、「なぜ星は光るのか」「なぜ星はあんなに遠いのか」「光っていうものがあるんだ」と数学的な興味に移行し、電磁波(光)や電磁気学への関心につながっていきました。
ケプラーの法則(惑星の運動に関する法則)を知った時は、びっくりしたと同時に感動しました。この法則を使えば惑星の運動を簡単に捉えることができます。「あ、万有引力! ニュートンさん! あー、すでにこんなにきれいな法則があるんだな」とワクワクしました。数学が大好きだったのでのめり込みましたね。星を勉強している人たちはそんな感じではないでしょうか。
星が好き→数式が好き→高周波用半導体デバイス研究、と思えばすべてがつながっています。

学生たちと一緒に一から研究に取り組むのはとても楽しいものです。教えることは学ぶこと――大変ですが、学生たちが理解してくれると嬉しいですし、一人ひとりフォローアップできるように考えています。理工系の学生は、寡黙ですが芯がしっかりしていて、目的やこだわりを持っている人が多い。とってもいいことだと思います。

今後は、より良い社会をつくるための基盤技術の創出に向けた研究を進めていきたいと思っています。ハードウェア分野の“物理屋さん”なので、電気回路分野で制御技術と融合させて新しい基盤技術をつくる――こうしたことがベースとなって「Society5.0」を実現できるのではないでしょうか。私たちの研究が未来につながっていくといいですね。

専門・研究分野

電子デバイス工学、マイクロ波ミリ波工学、電力工学

研究テーマ

次世代無線システムに向けた高周波デバイス研究

研究キーワード

化合物半導体(GaAs、GaN) 電子デバイス 高周波電力増幅器 無線システム 電力変換

7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに9 産業と技術革新の基盤をつくろう10 人や国の不平等をなくそう