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工学部総合デザイン学科
モノづくり × コトづくり
デザインプロセスを通し“心豊かになる体験”を追究
求められるユーザーエクスペリエンス
デザインでは、モノを通じてユーザーが得る体験までを考慮して設計するユーザーエクスペリエンス(UX)デザインが重要になってきています。
工学部 総合デザイン学科では、発想力や感性を核とし、UXの観点を用いたデザインプロセスを通して、多様な社会的課題の解決とともに、人々が“心豊かになる体験”の創造に取り組んでいます。「モビリティデザイン」をテーマに卒業研究を行った学生は、単にモビリティの形だけではなく、そのモビリティに乗る楽しさやサービスまでを設計し、付加価値を高めたモビリティのデザインを追究しました。
製品の具体的な形や色、機能を設計する前に、ユーザーとなる対象が何に困っているのか、また潜在的に何を求めているのかという “真の課題”を導き出すプロセスはデザインにおいて非常に重要です。インターネットなどで市場を調査しても“真の課題”に迫る有益情報にはたどり着けません。ユーザーにヒアリングをしたり、使用現場を観察調査したりするのが有効です。工学部 総合デザイン学科では、現地での観察調査や街頭インタビューなどを行った上で設計を進め、完成品が課題解決に至っているかをユーザーに確認・評価してもらい、改善に生かすデザインプロセスを体験できる授業を設けています。
人を科学的に解明
UXと密接に関係する「インタラクティブデザイン」の授業では、視覚的・認知的・身体的・情緒的・心理的側面などから人の特性を学び、演習を通じて人とモノの間のインタラクション(相互作用/コミュニケーション)をどうデザイン(設計)するかを学修します。「シグニファイア(signifier)」は、認知科学者によって提唱されたデザイン要素で、形状によって機能性を伝え、適切な行動へと誘導します。製品や建築、Web、アプリなどの設計に応用されており、さまざまな製品に付いているボタンは身近な実例です。多くは少し突起した形状になっていて、「押す」と書いていなくても人は「そこを押すんだな」ということが分かります。Web上でマウスオーバーすると色が反転したり、矢印や三角形のサインが表示されたりするのも「進む」や「スタート」を伝えるシグニファイアの応用事例です。「インタラクティブデザイン」の手掛かりとなるこうした要素も身についていきます。また、高齢者や視覚障がいの方など、誰でも見やすく分かりやすい情報を提供するためのユニバーサルデザインについても学び、必要な配慮や工夫について考察します。
デザインは、“ヒューマニティ”と“サイエンス”の要素を併せ持った分野です。人(ヒューマン)の特性などの知識を基に、具体的に科学(サイエンス)的な設計手法や評価手法を身につけ、デザイン技術を高めていきます。
新たな価値を創造する
――“共創時代”のデザイナーへ
今、デザインが果たすべき役割は、モノとしてアウトプットするだけではなく、体験価値の創造や複雑化した社会課題の解決に至るまで、その幅はどんどん広がっています。デザインに何ができるかを常に考え、持続的でより豊かな社会に向けて新たな価値を創造していくことが、デザインの仕事として今後一層求められます。そうした中で、さまざまな業種の専門家との共創が重要視されており、これを推進していく力を身につけた共創型人材が期待されています。また、昨今ビジネスにおいて注目される「アート(直感・感性)」「クラフト(経験・技術)」「サイエンス(分析・論理)」という3つの視点もデザインにおいて重要です。特定の視点に偏るのではなく、複眼で物事を捉え、判断していく力が必要です。
工学部 総合デザイン学科では、デザインプロセスを通じて得た気づきを基に、再びデザインを練り直し、手を動かして思考をアウトプットします。そのプロセスを繰り返すことで、発想力や感性を磨いていくとともに、モノづくりとコトづくりの両面を担う、“これからのデザイナーに求められる力”も実践的に育んでいきます。
X-Tech LaboratoryLaboratory
【 未来を創造する研究室がここにある 】堀川 将幸 教授
デザインの道に進んだのは、高校の美術の先生からの影響です。数学など理系科目が得意でしたが、絵を描くことやモノづくりも変わらずに好きでした。3年生の時に、建築学科への進学を目指す学生向けの美術の授業があり履修していました。その時の美術の先生から、理系と美術を生かせるデザインという領域の職業を教わり、その道に進んだ先輩もいると知って「面白そうだな」と興味を抱くようになり、工業意匠(デザイン)学科のある大学に進学しました。当時、工業デザインを専門にする学科は珍しかったです。どちらかというと人と違うことをしたい方なので惹かれたのかもしれませんね。
大学では広くデザインを学び、当時はまだ新しい分野の学問だった感性工学をテーマに卒業研究に取り組みました。曖昧な“人の感性”を工学的な視点で捉えていく。理系も好きでコンピュータや分析なども好きだったことから、学部時代は工学的な学びに重点を置いていました。
企業に入社してからは、企業向け(BtoB)の空調管理システムや医療機関向けの医療機器、また一般消費者向け(BtoC)のテレビやビデオ、スマホなどのユーザーインターフェースのデザインに携わっていました。家電製品などはユーザー心理や背景、使用シーンなどを想像できますが、例えば、医療機器は技師や医者などがどう使っているのか見当がつきません。現場に赴いて観察したり、課題をヒアリングしたりと時間をかけて調査を行い、デザインにつなげていました。
現在は、モノやコトのデザインを通して、人々にどのような価値を創造し、提供すべきか、デザイナーは何をすべきか、そして人の心の部分も含めて人々が真に求める価値をデザインでどう表現していくか――より根源的な問いに対峙し、「生活を心豊かにするデザインの研究」に取り組んでいます。企業時代を振り返ると、モノ中心のデザインの中で大量生産・大量消費に加担してきたような思いもあります。今は持続可能な社会を目指し、環境とともに、人々の生活が豊かになるデザインに貢献したいと考えています。
研究室の学生たちは、人の心の部分をデザインにどう生かすかに挑戦しています。
デザイナーは、手を動かすこと、そして絵を描くことの好きな人が向いていると思います。手を動かしながら、描きながら考える。絵は文字と同様に、人に『伝える』ための大事な手段だからです。何事も面白がり「何でだろう?」と興味を持って追究できる、好奇心旺盛な人を待っています!
専門・研究分野
デザイン科学、感性工学、認知科学
研究テーマ
生活を心豊かにするデザインの研究
研究キーワード
インタラクションデザイン ユーザーエクスペリエンス 価値成長デザイン
デザイン発想 共創 プロダクトデザイン UXデザイン