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総長からのメッセージ


湘南工科大学は学生に対して、卒業後自立した社会人として活躍できるように「キャリア形成」「進路研究」などの授業を必修科目として設置しています。
これらの授業では、本学のミッションである「社会に貢献する技術者」となるために、「勤労とは何か」「キャリア設計とは何か」を深く学びますが、実際の社会が見えるわけではありません。

そこで今回、糸山英太郎総長から湘南工科大学の学生へ、強く賢明な社会人となるために、実践的な知恵を授けるインタビューを実施しました。

聞き手:経済キャスター 江連裕子氏

―― 学生が社会に出る際に持っておくべき心構えを教えてください。

大学で培った実力と才能を発揮しながら、好きな仕事に就くのが誰にとっても理想的だろう。誰しも自分が好きな分野で活躍できれば、己の才能以上の力を発揮できる。
その一方で、すべての人間が好きな仕事に就けるわけではない。時には、自分が必要とされる場所、周囲の人間から求められる場所で地道な努力を続けることも肝要である。
私自身も、政治の世界へ入ったのは周囲の後押しがきっかけだった。
求められた場所で必死に努力を重ねることで、気づかないうちに実力は磨かれる。自分では思いもかけない才能が開花し、心底好きだと思える運命的な仕事に巡り合う結果となったのは典型的な一例だといえる。

自分の適性を客観的に見抜くことは難しいが、常に目の前の課題に対して努力を怠らず、全力で取り組んでいれば、必ず誰かしら認めてくれる人が現れるだろう。
何事も無駄だと思わず、むしろ、すべてを自分の血肉となるような経験にするのだと前向きに考えて研鑽を積む必要がある。そういった不断の準備をしている人間に、チャンスは必ず回ってくるものだ。

社会において社会人一年生は圧倒的な弱者だ。時の政権の甘言や、マスコミが発する情報についても安易に鵜呑みにしないよう十分注意しなければならない。
本学の学生は情報ツールの扱いについては習熟しているが、その中を飛び交う情報の本質や真意を読み解く術はまだ足りていないはずだ。自らは弱者であり、勉強と経験が必要であるという自覚が欠かせないだろう。


―― 若者が注意すべき「政府の甘言」とはどのようなものでしょうか。

例えば、岸田政権は「貯蓄から投資へ」と喧伝している。
「新しい資本主義」の実行計画を閣議決定し、預貯金に偏る個人金融資産を投資に振り向け、経済の活性化を目指す資産所得倍増プランを打ち出した。
インフレに負けないために金融商品を買ってほしいと、NISA(少額投資非課税制度)などの改革案を進めているが、これには賛同しかねる。
「新しい」と言えば耳触りは良いが、そもそも資本主義に新しいも古いもない。アベノミクスが招いたインフレを抑制するのは岸田政権の仕事であって、決して国民に押し付けられるべきものではない。

これが事業家、投資家として実績を重ねてきた私の率直な見解である。
社会に出たばかりの若者にとって本当に大切なのは「貯金と親孝行」なのだ。

―― 「貯金と親孝行」とはいい言葉ですね。ご自身は投資家でいらっしゃるのに、貯金を勧める理由を教えてください。

100%勝てる投資など、存在しない。リスクとリターンを正確に理解していない若者が投資など考えてはいけない。
まずは、自ら働いて得た給料をしっかり貯金すればよい。

加えて、高額な教育費用を準備し、高等教育機関である大学に通わせてくれた親御さんに感謝の気持ちを持たねば、社会人としての大成はありえない。
親孝行できない者が、周囲から尊敬されることはないからだ。

さらに言えば、ご先祖様にも感謝しよう。
仕事が休みの日には墓参りをして、「毎日仕事を頑張っている」と報告することが何よりの供養となる。


―― 社会人として必要な勉強はどのようなものなのでしょうか。

社会に出れば「技術者が作り上げる製品の価値は、注いだ技術と情熱だけで決まるものではない」ということを、痛いほど経験するだろう。
製品の価値は、各国の金利政策、為替水準などに翻弄される。
それは時に、理不尽なほど激しいものとなり、一国の産業を揺るがしかねない要因ともなる。

そのため、技術者として知識と技を向上させることは当然だが、普段から政治・経済にも関心を持たねばならない。
そして、卒業後も常に勉強を続ける姿勢を持ち続けること。
これは、これから社会人となる学生諸君にはぜひ伝えたい点だ。


―― 糸山総長は教育の力を強く信じていらっしゃるのですね。

国会議員時代、外務に携わっていた私は多くの国を訪問した。
そこで多くの国々が重要視していたのが、まさに「教育」だった。
教育とは、人が生まれたままでは持ちえない知識を伝える行為。そして言うまでもなく、教育を受ける者は若者たちであり、教育を与える者は我々、大人なのだ。

私は、今の若者たちに、悔いの残る人生を送ってほしくはない。
だからこそ、何事にももっと興味を持ち、積極的にチャレンジし、向上心を忘れずに、大きな夢を語り合える大人になってほしいと願っている。
本学に在籍する教職員は、このような私と同じ教育的信条を胸に秘めているはずだ。

本学は、学生を実践的、創造的な能力を備えた人間性豊かな技術者へと育成することを標榜しており、鍛え上げた学生を社会に送り出す教育機関であらねばならないとの信念を持っている。
本学の教職員は、すべての学生に対して、情熱的な教育を施すと、私は信じている。

湘南工科大学は私の分身であり、私にとって湘南工科大学は何ものにも代えがたいものだ。
愛する湘南工科大学が、今後も学生たちにとって思い出深い学舎であり続け、将来にわたって社会に貢献する技術者を輩出し続けることを切に願っている。
(インタビュー:2022年7月1日)
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