情報学部
2023年4月開催

これからの未来はどうなるのか?
そして未来に生きる力を育むには?

潮辻 シアン

「やりたいことを、できることに。」
それって未来にどう活用するの?

2023年4月に湘南工科大学に「情報学部」が開設した。調査によると従来の情報工学科とコンピュータ応用学科が統合されただけではなく、これまでにない新たな教育体系として生まれ変わったそうだ。ひょっとすると、大学の学びに革命を起こした先例といえるかもしれない。なぜ、新しい情報学部は誕生したのか。そして、湘南工科大学が掲げている「やりたいことを、できることに。」という言葉にはどのような意味があるのか。情報学部設立に携わる二宮教授に取材を試みた。

二宮 洋 教授

二宮 洋 教授研究テーマ:人工知能の学習アルゴリズムに関する研究

5年後、10年後の未来はどうなるのか。
AI研究のスペシャリストの予測とは?

5年後、10年後の未来はどうなるのか。AI研究のスペシャリストの予測とは?
潮辻 シアン

シアン:二宮先生はAIのどんな研究をしているのですか?

二宮 洋 教授

二宮教授:AIの学習アルゴリズムの高速化に関する研究です。簡単に言うと、人間だと20年かかるものをAIに1カ月もしくは1週間で学習させる研究です。

潮辻 シアン

シアン:現時点でAIはどこまで進化していますか?

二宮 洋 教授

二宮教授:人間のようにさまざまなことができるAIはまだ存在していませんが、囲碁や将棋で人間に勝つとか、人間より安全な運転ができる自動運転車など、特定の分野ではすでに人間の能力を超えています。

潮辻 シアン

シアン:今後、AIはどのように進化するとお考えですか?

二宮 洋 教授

二宮教授:AIの究極の目標は、「人間にとって、やさしく、かつ頼れるパートナーになる」ことです。人間の能力を超えている個々の技術を統合した、何でもできる「AIロボット」のようなイメージでしょうか。

5年後、10年後の未来はどうなるのか。AI研究のスペシャリストの予測とは?
潮辻 シアン

シアン:そのAIロボットはどのような分野で活躍すると思いますか?

二宮 洋 教授

二宮教授:自動運転車はもちろん、医療・介護分野などにもAIが導入されるでしょう。また、AIは記憶をたどって処理することが得意なので、過去の判例をさかのぼる弁護士や裁判官といった法曹界にも導入されるかもしれませんね。

潮辻 シアン

シアン:裁判官がAIロボットになる!!

二宮 洋 教授

二宮教授:ははは、それが人間にとって良いかどうかです。自動運転車も同じで、「人間が運転するタクシーと人工知能が運転するタクシーのどちらを利用したいか」、すぐには結論が出ませんよね。これから社会で議論になってくるはずです。

5年後、10年後の未来はどうなるのか。AI研究のスペシャリストの予測とは?
潮辻 シアン

シアン:今後、科学技術全体の未来はどうなると思いますか?

二宮 洋 教授

二宮教授:私も5年後、10年後の未来はわかりません。専門としているAIならわかりますが、それ以外の個々の技術がどのように発展し、それぞれの技術がどう組み合わさるか未知数だからです。

潮辻 シアン

シアン:技術の組み合わせが未来に影響するんですか?

二宮 洋 教授

二宮教授:そうです。例えば、スマホの無い時代はガラケーが中心でしたが、「iモード」の誕生によってインターネットに接続できました。一方で、スケジュールを管理する電子手帳も市販されていました。Appleのスティーブ・ジョブズがこの2つを組み合わせ、さらに「指で操作できたら面白いのでは?」と考えて生まれたのがiPhoneです。このようにガラケー、電子手帳、指センサーなど個々の技術が発展し、組み合わさって「スマホ」というあたらしい価値が生まれたのです。

潮辻 シアン

シアン:(なるほど、一つの技術が発展するだけではなく、「組み合わせること」が大切だと先生はすでに気づいているのか)

未来を創造するために必要となる
コミュニケーションを育む環境づくり

未来を創造するために必要となるコミュニケーションを育む環境づくり
潮辻 シアン

シアン:スティーブ・ジョブズのように、「新しい未来を創造する力」はどうしたら身につきますか?

二宮 洋 教授

二宮教授:何もないところから何かを創造するのは人間には難しいです。でも、人間には頭の片隅にある「何だか見たことがある」ということを、自分の研究に組み合わせる力があります。もしくは、仲間とディスカッションすることで気づくこともあるでしょう。そのような学びの環境づくりこそが私たちの使命です。

潮辻 シアン

シアン:それが、新学部の学びの特徴ですか?

二宮 洋 教授

二宮教授:はい。大学のこれまでの学びは、1年次は入門、2年次は基礎と応用、3年次に実習、4年次は卒業研究といった積み重ね式の勉強ですよね。

潮辻 シアン

シアン:それが現代では一般的なようですね。

二宮 洋 教授

二宮教授:情報学部では、1年次に情報学部で取り組むICTの10分野に触れ、それぞれの課題解決に取り組む先生や先輩の姿を見て、自分の「やりたいこと」を見つけていきます。そして、自分の興味のあることや得意なことをどんどん伸ばしていくことで、「できること」にするのです。

未来を創造するために必要となるコミュニケーションを育む環境づくり
潮辻 シアン

シアン:それなら、まだやりたいことが見つかっていない学生にも魅力的ですね。

二宮 洋 教授

二宮教授:そうです。「自分のやりたいことを勉強する」のが、大学の学びにおいて一番ダイナミックで面白い部分だからです。そして、学生一人ひとりが極めたものを「MIX」するのも大きな特徴です。

潮辻 シアン

シアン:「MIX」って混ざり合うって意味ですか?

二宮 洋 教授

二宮教授:はい。先ほどスマホの話をしましたが、それぞれの技術を発展させている仲間たちが学年を問わず集まり、課題を解決するための意見やアイデアを持ち寄って議論し、新しいものを創造します。

潮辻 シアン

シアン:学年の異なる学生とも協働するんですか?

二宮 洋 教授

二宮教授:社会に出たら年齢は関係ありませんよね。いろんな学年の学生が一つの空間に集まり、お互いに教え合い、学び合う。先生が「新しい価値はこうしてつくるんだよ」と教えることはできませんから、「MIXできる学びの環境」を提供することが重要です。

未来を創造するために必要となるコミュニケーションを育む環境づくり
潮辻 シアン

シアン:この研究センターも明るくて開放的ですね。卓球台もあるし。

二宮 洋 教授

二宮教授:ここは「AI R&Dセンター」といって、AIに興味のある学生が集まる場所です。すべてオープンなので、「あの学生、何か面白そうなことをしているぞ」など関心が高まります。また、協働作業や遊びを通じてさまざまなコミュニケーションが生まれる場となっていますので、お互いに何をやっているか意識し合える環境にしています。

潮辻 シアン

シアン:何だか楽しそうですね!

二宮 洋 教授

二宮教授:大規模大学では難しいですが、比較的小規模な湘南工科大学だからこそ、このような施設が可能です。現在はまだAIの研究センターですが、今後は情報学部全体として1〜4年生が混ざり合う空間ができます。その中でコミュニケーションが生まれ、新しい未来を創造する力が身につくのです。

潮辻 シアン

シアン:だから、「AI R&Dセンター」はこれまでの大学にはない空間になっているんだ。二宮先生、ありがとうございました!

※所属・学年は取材時の内容です。
(2023年12月13日更新 2021年12月23日公開)

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