学年を越えた多様な学生が集う
「混じり合う学び」とは?
「東京ゲームショウ2021」に
出展した2チームに取材を試みた
2021年9月に開催された「東京ゲームショウ2021オンライン」(TGS)には、湘南工科大学コンピュータ応用学科(現)の学生が開発した5作品のゲームが出展されたという。今回は、その中でAR対戦型カードゲーム『ARUT』と3Dアクションゲーム『コインだモン!』を開発した2チームの学生に接触してみよう。アプリ開発のプロセスなどを知ることで、きっと湘南工科大学の学びが見えてくるはずだ。
能登 巧実さんコンピュータ応用学科
3年
髙橋 心希さんコンピュータ応用学科
3年
近藤 海斗さんコンピュータ応用学科
3年
高橋 歩希さんコンピュータ応用学科
2年
山本 翔大朗さんコンピュータ応用学科
2年
開発したゲームの特徴と
それぞれの役割について
シアン:まず『ARUT』チームに伺います。ゲームの特徴は?
髙橋(心):『ARUT』はARを用いた2人が対戦するゲームです。カードをスキャンするとキャラクターが浮かび上がってバトルを展開します。ステージによって勝敗が異なるため、最後までどちらが勝つかわからないドキドキ感を楽しめます。
シアン:それぞれの役割とこだわった点について教えてください。
髙橋(心):僕は、メインメニューやキャラクターが登場する画面のプログラムを担当しました。こだわったというより、大変だったのはバグの修正です。不具合の原因が分からないところもあり、修正する作業に苦労しました。それと、端末ごとに画面のアスペクト比(縦横比)が異なることから、さまざまな端末に合うように一つひとつ調整するのが大変でした。
近藤:私は『ARUT』に登場するウサギをモチーフにした冒険者のキャラクター、ゲームの背景画像の作成と、『コインだモン!』に登場する電球をモチーフにしたキャラクターの作成を担当しました。今回はCG上で質感の違いをうまく表現することにチャレンジしています。中でも『ARUT』に登場するキャラクターの「もふもふ」している質感をスマホの性能にあわせて表現するのがとても難しかったです。
能登:僕はCGを担当しました。こだわったのはゲームに登場するドラゴンです。チームメンバーから「目の表情をもっとしっかりしたい」とリクエストがあり、一から作り直したことや、ドラゴンの爪に窪みを入れるなどの細かい調整が大変でした。
シアン:熱いこだわりが伝わってきました!ゲームが完成した時の感想は?
髙橋(心):最初は「みんなでゲームを作ろう」と気楽に作業を進めていました。ところが急に先生から、東京ゲームショウに出展すると知らされ、まずそれにびっくりしました。それから「TGSに出展するならクオリティの高いものを作ろう」となり、最初の想定と比べてとても良いものができたことがうれしかったです。
近藤:今振り返ると、「ここ、もうちょっと直したかったな」と思う部分もありますが、それよりもチーム一丸となって一つのものを制作し、ちゃんと形になったことがうれしかったです。
能登:「自分の作ったもののレベル感では、そんなに感動しないだろう」と思っていましたが、最終的にはCGによって立体感が得られ、でき上がった時は感動しました。
シアン:TGS出展の反響はどうでしたか?
近藤:2021年はオンライン開催だったのでユーザーの生の声は聞けませんでしたが、『ARUT』は湘南工科大学が出展した5作品の中で、学科特設サイトの閲覧者数やYouTubeに掲載したプロモーションビデオの視聴回数が一番多かったです。
高橋(歩):『コインだモン!』もYouTubeの視聴回数は今回の5作品の中で2番目に多かったです。ちゃんと見てくださる方がいたことはとても励みになりました。
シアン:次に『コインだモン!』について、まずはゲームの特徴を教えてください。
高橋(歩):3Dアクションゲームで、あまりゲームをプレイしない人でも簡単に操作できるようになっています。対戦型ゲームとして4人まで対応しているため、みんなで集まってワイワイと楽しめるのが特徴です。
シアン:それぞれの役割とこだわった点について教えてください。
山本:僕は『コインだモン!』に登場する3種類のキャラクターを担当しました。こだわったのは、キャラクターがジャンプする動きや走っている姿といったモーション作成です。
高橋(歩):音楽の作曲とタイトル画面などのデザインを担当しました。コンピュータ音楽を作るのは初めてだったので、作り方を勉強することから始め、ちゃんと聴き映えする曲を目指して試行錯誤しました。
シアン:それぞれの仕事ぶりが光りますね!ゲームが完成した時の感想は?
山本:自分の作ったキャラクターが動いて、実際にプレイできたことはうれしかったですし、これまでにない新鮮な気持ちでした。
高橋(歩):ゲームの中でどの曲を使用するかはプログラムの担当者に任せていましたが、予定では2曲だったものを3曲使用してくれました。僕の作った音楽を少しでも多く採用しようと、チームの仲間が配慮してくれたことがとてもうれしかったです。
みんなで協働する
メリットって何?
シアン:チームでゲームを開発されたようですが、みんなで協働するメリットはどんなところですか?
髙橋(心):それぞれの学生によって特技が異なり、得意・不得意もさまざまです。それらに応じて役割を分担できますし、お互いに不得意な部分を補い合えます。
近藤:同じ学年の学生が集まるよりも、学年の異なる学生と組むことで新たな発想が生まれやすいです。
高橋(歩):自分が経験してきたことや強みを最大限に活用できるのがメリットです。僕はゲームについてあまり詳しくなかったのですが、吹奏楽の経験があったので音楽開発という部分でチームに協力できました。
シアン:素敵ですね!協働作業を通じて、どんなところが成長しましたか?
能登:計画を立てて進める力です。当初の予定から完成日が延びましたが、作業工程を見直しながら、計画を立てて実行する力が身につきました。
近藤:メンバーそれぞれいろいろな考えを持っていますので、一度決定しても「こうしたい」と予定以外の意見が出ることもあります。その調整力が身につきました。
山本:「みんなが作りたいゲームとは何か」を聞きながら、それに合ったキャラクターや障害物を自ら考えられるようになるなど、チームメンバーの意見を取り入れられるようになりました。
高橋(歩):僕は、プログラムのメイン担当とペアになって、お互いに教え合いながら勉強できたことです。彼は「こんな動きがほしい」といった要望があると、その度に一生懸命調べて実現させてくれました。より良いゲームにしたいという彼の姿はとても印象に残っています。
髙橋(心):『ARUT』は作業量も多かったので、大掛かりなものを作る時はやっぱり大人数でやったほうが良いです。協働作業では、人から何かを受け取ることも与えることもあります。このような「高め合い」が生まれる環境はとても楽しいです。
近藤:一人でやると自分だけで完結しますが、みんなでやる時は会話をしなければ計画は進みません。そのためのコミュニケーション力も磨かれます。
能登:僕は自分に甘く、一人だと「これくらいでいいかな」とすぐに妥協してしまいがちです。チームを組むことによって責任感が生まれて、妥協することなく作品の完成度も高くなりました。また、チームメンバーがいると作業中に他のゲームの話で盛り上がることもあって、みんなで楽しみながらやれます。
牧先生:私からも良いですか?
シアン:あ、牧先生!もちろんです!
牧先生:協働作業によってゲーム開発を実現させることもメリットですが、もう一点、学年の上下と横のつながりを「MIX」することによって、社会に出た時に自らの力で進んでいく力が身につくのです。
シアン:自らの力で進んでいく力って、どういうことですか?
牧先生:社会に出るとさまざまな立場・能力を持った人と協働で仕事をすることがほとんどです。その時に、自分の武器(能力)を活用し、活用してもらう力、また、ほかの人の能力を活用する力が必要になってきます。「MIX」の環境で、スキルだけでなく、自らの力で進んでいく力を身につけていき、将来に生かして欲しいなと思います。
シアン:確かにそうですね!実践的で楽しそうな学びですね。皆さん、ありがとうございました!
※所属・学年は取材時の内容です。
(2022年2月25日更新)
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