情報学部
2023年4月開催

さまざまな技術を融合させて
新たなメディアコンテンツを
生み出す学びとは?

潮辻 シアン

情報メディア専攻の学びに
潜入してみた。

情報学部 情報学科の情報メディア専攻。ここでは、新たなメディアコンテンツを生み出す学生を育てるそう。そもそもメディアコンテンツって何だろう?この時代ではどこまで研究が進んでいて、どんな学びが展開されるのだろう?さっそく、堀越教授に話を伺ってみた。

堀越 力 教授

堀越 力 教授研究テーマ:現実空間とバーチャル空間をつなぐインターフェース技術に関する研究

メディアコンテンツが
未来を面白くしていく

堀越 力 教授
潮辻 シアン

シアン:情報メディア専攻では、どのようなことが学べますか?

堀越教授

堀越教授:「情報メディア」とあるように、メディアを主体とした学びを展開します。例えば、CG、ゲームクリエイト、最近ではVRやARの分野ですね。ほかにも、サーバーやクラウドシステムなどITの基礎となる分野も学びつつ、WebシステムやWebコンテンツの制作など、自分で新たなコンテンツを考えるというのが情報メディア専攻です。

潮辻 シアン

シアン:学びの領域がとても広いですね!

堀越教授

堀越教授:そうです。「メディア」にはあらゆるものが含まれますので、新たなコンテンツを提供する手段としてはWebかもしれませんし、VRやARかもしれません。これからも新しいメディアが出てくる可能性がありますので、手段をあえて限定する必要はないのです。いろいろな視点を持ちながら、「これからの社会をどうしたらより良くできるか?」を広く考えられるようにしています。

潮辻 シアン

シアン:中でも堀越先生の研究はXRだそうですが、そもそもXRって何ですか?

堀越教授

堀越教授:ご存知のようにVRは「仮想現実」で、ARは現実世界にバーチャルが現れる「拡張現実」です。今後は「V」や「A」以外にもいろいろと出現することが予想されますので、“未知数”を表す「X」を用いて「XR」という呼び方をしています。私の研究はこのXRで、バーチャルなものと現実空間をスムーズにつなぎ合わせるためのインターフェース技術がメインになります。

潮辻 シアン

シアン:XRは、現在どのあたりまで研究が進んでいますか?

堀越教授

堀越教授:VR空間ではディスプレイ機器を装着してバーチャル空間を体験します。ただ、リアルに見えるだけで、これまではモノに触れるといった体験はできませんでした。それを触れたかのような「触覚」を再現する。あるいは、ヘッドフォンを用いることで「聴覚」を再現する。さらに、「味覚」や「嗅覚」の再現に関しても研究が進められています。

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潮辻 シアン

シアン:ええっ?味覚や嗅覚の再現ですか?!

堀越教授

堀越教授:例えば、ARメガネを使って、視覚的に食パンにイチゴジャムが塗ってあるように見せかけただけでは、食べてもただの食パンです。しかし、この食パンに甘味と酸味のあるシロップをかけて、イチゴの匂いを漂わせれば、イチゴジャムを塗った食パンを食べているように錯覚させることも不可能ではありません。要は、五感を上手にごまかして異なる体験をさせるのです。

潮辻 シアン

シアン:この技術を使えば、実際はコンビニのお弁当を食べているのに、フランス料理を食べた気にもなりますか?!

堀越教授

堀越教授:当然、どこまでごまかせるか限界はありますけどね。具体的な研究例としては、ARで出現させた食べ物に匂いを与えることで、実際に食べているものの味が変化するということが報告されています。また、本当は小さいクッキーを食べているけど、視覚的に大きなクッキーに見せることでたくさん食べたような感覚になったそうです。ということは、ダイエットにもつながるんですね。

潮辻 シアン

シアン:すごい!五感を操る技術は、いろいろな分野に活用できそうですね!

堀越教授

堀越教授:現代社会は、「モノの消費」から「コトの消費」に移り変わっています。以前ならモノを買うことで満足していましたが、最近は「体験したい」という欲求が増えているのです。ただ、体験する場所まで行くのは大変。そこでXRを使えば「行かなくても体験する」ことができます。旅行やレジャーなど体験を売るビジネスでの活用が広まる可能性はありますね。

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潮辻 シアン

シアン:自宅に居ながらレジャー体験できる日が来るのも、そう遠くないかもしれないですね!

堀越教授

堀越教授:スポーツを再現することもできますよ。例えば、サーフィンなどは自然が相手ですので、同じ波はなかなかやってきません。でも、XRを使えば、同じ波で何度も繰り返し練習することができます。センサーをつけて体の動きを計測しつつ、360度カメラで映像をつくれば、XR空間の中ではサーフボードに乗った体験を再現できるからです。このようにスポーツのトレーニングにも応用できるなど、あらゆる分野で期待されています。

潮辻 シアン

シアン:ここまでXRの技術が進んでいるとは…。おそるべし!湘南工科大学。

自分の得意分野を生かして
仲間たちと協働する学び

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潮辻 シアン

シアン:情報メディア専攻では、どのように学ぶのですか?

堀越教授

堀越教授:「プログラミングを中心に学ぶ」というイメージがあるかもしれませんが、情報メディア専攻ではプログラミングは一つの手段であって、それよりも新しいコンテンツやビジネスにつながる企画力を養い、技術を活用してアイデアをどのように実現するかを学生同士で協働しながら模索する、いわゆるコンテンツクリエーターの育成をメインに考えています。

潮辻 シアン

シアン:ここには、いろんな研究に取り組んでいる学生がいますよね?

堀越教授

堀越教授:はい、学生の皆さんは、好きな分野についてすごいノウハウを持っています。自分の得意分野を生かしながら、チームを組んで新たなものをつくるのが情報メディア専攻です。学年も関係なく、お互いに意見を出し合いながら協働します。

潮辻 シアン

シアン:例えば、CGが得意な学生と音楽が得意な学生がチームを組むようなイメージですか?

堀越教授

堀越教授:そうです。今年、バーチャルリアリティーコンテストに参加しました。そのときは、デッサンが得意な人、文章を書くのが得意な人、プログラミングが得意な人、動画編集が得意な人など、いろんな学生が集まって得意分野を生かしながら一つの作品を制作しました。協働することでコミュニケーション力が磨けますし、社会性も身につけることができます。

潮辻 シアン

シアン:ほかの専攻との関わりもありますか?

堀越教授

堀越教授:いい質問ですね。例えば、バーチャル空間の中でアバター同士が会話するとなると、そこには別の人間が実際には存在しています。しかし、近い将来は、AIアバターが空間の中に自然と紛れていて、一緒に会話するのが普通になるかもしれません。そのため人工知能専攻で研究するAIの技術も必要となります。

潮辻 シアン

シアン:会話の相手がAIになるかもしれない!?

堀越教授

堀越教授:はい。さらにバーチャル空間にいる時に、モノに触れるなどいろいろな行動の指示をする場合には外界の情報を取得しなければなりませんので、情報工学専攻で研究するIoTのセンサー技術が必要となります。このように一つの分野に特化しつつ、他専攻のいろいろな技術を融合しながら自分の得意な技術を生かすことを考えていきます。

潮辻 シアン

シアン:研究テーマは、自ら決めることができますか?

堀越教授

堀越教授:もちろんです。自分たちの好きなテーマに取り組むことで学生自身のモチベーションが上がりますから。結果的に、協調性や課題解決力が身についてきます。

潮辻 シアン

シアン:将来の進路も広がりそうですね。

堀越教授

堀越教授:情報系というとこれまではIT企業が多かったのですが、それにプラスして新しいビジネスを企画したり、コンテンツクリエーターなどを目指す学生が増えてほしいですね。さまざまな分野の企業で新しい風を吹かせられる人材になってほしいです。

潮辻 シアン

シアン:このセンターが学びの中心になるそうですが、とてもおしゃれで開放的な施設でね。何だか大学には見えないです!

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堀越教授

堀越教授:ここXRメディア研究センターは、モーションキャプチャーのカメラを部屋全体に設置したスタジオがあり、さらに、数十人が同時に活動できる広い“学びスペース”もあります。必要に応じて机を移動して議論することができ、カウンター席では一人黙々と作業することもできます。自由な時間に、自由な姿勢で、自由に会話しながら学べるセンターとなっていますので、ぜひ皆さんも見学に来てほしいですね。

潮辻 シアン

シアン:学生の議論も盛り上がっていますね〜!

堀越教授

堀越教授:お互いに「こっちじゃない?」「こうしたほうが面白いよ!」など、議論を楽しみながらゲーム感覚で制作していますね。新しいアイデアを生み出すためには、このような環境の中で学べることが重要なのです。

潮辻 シアン

シアン:(我々の住む未来のメディアコンテンツはここから誕生するのかもしれない…。これは引き続き調査する必要があるかもしれないな…)。堀越先生、ありがとうございました!

※内容は取材時のものです。
(2022年6月3日更新)

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