AI時代を生き抜く
人材になるための
学びとは?
人工知能専攻の学びに
潜入してみた。
未来において重要なキーワードとなっているAI。情報学部 情報学科の人工知能専攻は、そんなAIのエキスパートを養成するという。今回は内山教授に専攻の学びについて伺ってみよう。近未来についてワクワクする話も聞けるかもしれない!
内山 清子 教授研究テーマ:機械(深層)学習を用いたSNS上の感情分析や歌詞分析、医療や論文などの専門用語分析
自律的に判断して行動する
それが、AIの究極の目標
シアン:人工知能専攻では、どのようなことが学べますか?
内山教授:知能情報処理からデータサイエンスまで、非常に幅広い分野を学ぶことができるのが特徴です。
シアン:AIは社会的にも大きな影響を与え始めていますね。
内山教授:AIという言葉を知らない人がいないぐらい普及していますよね。私たちの身の回りだと、AIスピーカー、チャットボット、家電製品のお掃除ロボットなどにもAIが搭載されているので、非常に身近な存在となっています。
シアン:AIの研究はどのあたりまで進んでいますか?
内山教授:実は、現在一般的に普及しているAIはタスク型といって、ある限られた範囲の中でプログラムによって学習・自動化されているものが中心です。AIの究極の目標である「自律的に判断して行動する」という領域まではまだ達していないのが現状です。
シアン:具体的にはどのような点がまだ不十分ですか?
内山教授:代表的な例がコミュニケーションですね。人と人であれば目線や表情を汲み取って返答できますが、AIにはそのようなものを読み取る力がまだ足りていません。AIスピーカーやチャットボットも、「明日の天気を教えて」と投げかけると返答してくれますが、インターネットと同じような表面的な内容が多いのが現状です。やはり、深い部分での会話はまだ難しいかなと思っています。
シアン:なるほど!ちなみに先生は、近い将来AIと自然なコミュニケーションができるようになると思いますか?
内山教授:はい。AIの究極の目標は、自分でデータを収集し、考え、判断し、アウトプットするというものです。相手の表情や感情、性格、状況、言葉の文脈に加えて、多くのデータを複合的に学習することで、人との自然なコミュニケーションがある程度できるようになると思います。
シアン:今後AIがより進化すると、未来社会はどのように変化しますか?
内山教授:2013年にイギリスの研究者が「10〜20年後にAIが人間の仕事を奪う」という研究論文を発表して、世界が衝撃を受けましたね。実際に、AIは単純作業やルーティンが決められているものはすぐにこなせます。一方で、ゼロから何かをつくりだすクリエイティブなことや、専門的で複雑な判断が必要なものは苦手です。今後はAIでできることと、できないことの区分けがはっきりしてくるはずです。
シアン:そうすると、人間の役割も明確になりますね。
内山教授:その通りですね。例えば、人から言われたことをそのままやればいい仕事、繰り返し単純な作業だけの仕事は無くなるでしょう。だからこそ、自分で考えて、判断して、学習できる人であれば、AIが発達した時代でも生き残っていけるのです。
シアン:それが、人工知能専攻の育成の土台となっているのですね。それでは、専攻の学びの特徴を教えてもらえますか?
内山教授:人工知能専攻は、数理科学やプログラミング言語といった基礎的な学びを修得しつつ、情報工学専攻や情報メディア専攻と協働しながらより実践的にAI技術の応用にチャレンジできる“課題解決型実習”が特徴となっています。
シアン:他専攻の学生と一緒にコラボする機会も多そう!
内山教授:はい、他専攻の学生はもちろんのこと、学年の垣根を越えて一緒に課題解決に向けて取り組んでいきます。上級生が学んだことを下級生に教えたり、みんなの知識や考えをMIXさせることで、より学修が深まるのです。
シアン:その舞台となるのが、このセンターですね!
内山教授:ここはAI R&Dセンターという施設で、壁面のボードには学生がいろいろな目標を書いていますが、それに向かって研究を進めるなど、メンバーと一緒に切磋琢磨する拠点となっています。
シアン:センター内は、自分のお気に入りの場所で学習していいそうですね。大学の研究室というより、おしゃれなカフェにいるような気分で勉強できるなんて素敵だな〜!
内山教授:Googleやヤフーなど大手IT企業のオフィスでもこのようなオープンスペースを取り入れており、社員の議論が活発化しているそうです。学びにおいても人と話をする場はとても重要で、学生同士でアイデアを交換し合える、困っていることを気軽に話し合えるスペースとして役立ててほしいです。
AIを学びながら
AIを育てていく
シアン:内山先生はどのような研究に取り組んでいますか?
内山教授:「自然言語処理」をテーマとした研究です。私たち人間が使う言葉のことを「自然言語」と言い、一方でコンピュータが理解するプログラミング言語を「人工言語」と言います。私の研究は、大規模なテキストデータから新たな知識を抽出して分析することで、コンピュータで人間が使う自然言語を処理する技術を学び、言葉の意味を深く追究するのが目的です。
シアン:大規模なテキストデータというのは、例えばどんなものですか?
内山教授:Wikipediaなどは知識の塊のようなデータですよね。最近ではTwitterで皆さんがつぶやいているデータなども収集することができます。ただ、Twitterの情報はビッグデータですので、その中から目的のトピックについて「どんなことが語られているか」を見極めるための、さまざまな分析手法を用いた研究に取り組んでいます。
シアン:学生が研究している例を教えてもらえますか?
内山教授:一つは、音楽の歌詞をデータとして収集するという研究に取り組んだ学生がいます。大ヒットしているアーティストの歌詞を調べると、「このような言葉がよく使われている」ということが分かるのです。
シアン:ええっ??そうすると、この手法を用いればヒット曲もすぐに生み出せるってことですか?!
内山教授:残念ながら、そこまでは検証できていませんが(笑)。ただ、あるジャンルや時代における流行曲に共通する単語や、アーティストによる特徴的な単語は分かります。ほかにも新型コロナウイルスの感染状況によって、人々の感情がどのように推移するかを分析した学生もいます。
シアン:人々の感情というと…「不安」や「心配」とかですか?
内山教授:はい、Twitterの情報から「怖れ」「厭だ」「喜び」など人間の感情を10種類に分類して分析します。例えば、感染が広まった当初は「怖れ」という感情が強くなり、緊急事態宣言が解除されると「喜び」の感情が増えました。全体的には「厭だなあ」という雰囲気はずっと続いていたことも、データとしてはっきり出ましたね。
シアン:なるほど!言葉を分析することで、社会全体の雰囲気が分かるということですか!
内山教授:今回は日本語に特化しましたが、世界中の言語で分類すれば国内外の感情の推移も分かるようになります。
シアン:人工知能専攻の学びによって、どのような力が身につきますか?
内山教授:プログラミング言語を修得できるのはもちろんのこと、収集したデータの意味を理解して、かつ、どのように分析して判断するかといった能力が修得できると考えています。
シアン:卒業後はどのような分野で活躍できますか?
内山教授:自然言語処理を始めAIはすでに応用分野になっていますので、多方面での活躍が期待されています。例えば、顧客の情報を扱う企業のマーケティング部門では、消費者のさまざまな意見をテキストマイニングで分析することが考えられます。また、サポートデスクなども、電話による問合せに対してどのように応答すればよいか、AIが自動的に判断する技術も出現しています。
シアン:そういえば、先ほど伺った歌詞の研究をされていた学生は、どんな分野に就職されたのですか?
内山教授:現在は、大手システムインテグレーターの会社に就職し、音楽情報サービスの「どの曲が、いつ、どれくらいダウンロードされたか」というデータを集計して分析するシステム開発の仕事をしています。ほかにも、検索エンジンで有名な大手インターネット会社でアプリケーションやプラットフォーム開発の仕事に携わっている学生もいます。人間の行動や社会のビッグデータを分析できる時代になったからこそ、データを扱う仕事も増えているのです。
シアン:AIを学んだ学生は、どの分野でもひっぱりだこなんですね!
内山教授:現代の私たちにとって、かけがえのない存在といえば家族や友人などですが、もしかしたら近い将来はそこに「AI」が加わるかもしれません。そんなAIを自ら育ててみたいという人は、ぜひ本学で私たちと一緒に挑戦してほしいですね。
シアン:(AIが、かけがないのない存在になるなんて、さすが最前線で研究しているだけあって分かっているな…)内山先生、今日はありがとうございました!
※内容は取材時のものです。
(2022年5月30日更新)
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