「やりたいこと」に取り組む
学生たちの実態に迫る
「やりたいこと」を追究し
「できること」のその先へ
前回の潜入取材では、湘南工科大学の「やりたいことを、できることに。」という学びについて二宮教授から話を伺った。しかし、ここで疑問が残る。実際のところ学生たちは本当に「やりたいこと」に向き合っているのだろうか。そして、みんなはどのように「やりたいこと」を見つけたのだろう。さっそく、AI R&Dセンターで研究している「AI研究チーム」の学生メンバーに接触した。
マハブービ シェヘラザードさん(シャーさん)大学院 電気情報工学専攻 2年
山富 龍さん情報工学科 3年
横断型学修プログラム・AIコース
鮫嶋 優太さん情報工学科 3年
横断型学修プログラム・AIコース
日野 舞さん情報工学科 2年
横断型学修プログラム・AIコース
どんな学びに取り組んでいるか?
どうしてその研究を始めたのか?
シアン:皆さんはAIのどんな研究に取り組んでいますか?
鮫嶋:このチームに共通するのは、AIのもとになる深層学習のアルゴリズム開発です。例えば、AIに「犬と猫」を識別させるためには、耳、鼻、尻尾といった顕著な特徴を学習させる必要があります。これを「どのように暗記させるか、最適な方法を考える」のがテーマです。
シアン:え?AIに暗記させる方法って、いろいろあるんですか?
シャー:例えば、化学式って覚えるのが難しくて、人それぞれ暗記の方法が異なりますよね。同じようにAIにもさまざまな覚え方があります。「複雑な数式」を使えばより難しい問題を扱えるようになりますが、覚えるのに時間がかかります。逆に、「簡単な数式」なら処理速度は上がりますが、間違いも多くなります。
山富:そこで、僕は「複雑な数式」を効率化するための研究に取り組んでいます。鮫嶋くんは・・・
鮫嶋:「複雑な数式」を使わずに、もっと速く学習させる数理モデルを研究しています。
日野:私は、AIがどのように内部で学習するか、数学的な内容を先輩たちに聞きながら、実際にプログラムを組んでいます。
シアン:皆さんは何がきっかけでAIの研究を始めましたか?
日野:私は薬学部を目指していたのですが、きっかけは湘南工科大学で情報を学んでいた兄の影響があります。また、人工知能を扱えるシステムエンジニアの需要は増えているのに人材が不足していることを知り、興味を持ちました。
山富:さまざまな研究テーマの中で、AIが一番難しそうで将来性があると思ったのがきっかけです。3年生になってAIの勉強を始めましたが、同学年の鮫嶋くんはすでに学会で発表をしていました。その姿に触発されて「自分も頑張ろう!」と強く感じました。
鮫嶋:僕は、高校時代に人間の脳について興味を持ち、「AIを知れば、人の脳を知ることができる」ということを知ったのがきっかけです。今、研究しているAIアルゴリズム開発学習は、まさしくその「脳を知る」部分といえます。
二宮教授:そう、彼らのように皆さんもやりたいことが見つけられるよう、新たな情報学部では1年生全員に、AIを含むICTの10分野を幅広く体験してもらいます。
シアン:おっと、二宮先生がここでインタビューに参加!先生、幅広く体験するとどんなメリットがあるんですか?
二宮教授:いろいろな研究に取り組んでいる先輩や先生から話を聞くことができます。そのため、「これ面白そう!」と思えるテーマが必ず見つかるはずです。
シアン:先生、補足ありがとうございます!
これからやってみたいこと、
将来なりたい自分について。
シアン:2年生の日野さんは企業のインターンシップに参加したそうですね。
日野:はい。2年生の8月に、大手電機メーカーが主催した情報システム部門のインターンシップに参加しました。もともとシステムエンジニアになりたいと思っていたのですが、想像以上に幅広い仕事をされていて、活躍している女性が多かったのも意外でした。インターンシップで将来の方向性が見えた気がします。
シアン:2年生ですでに将来を見据えているんですね。今後、皆さんはどのような研究に取り組みたいですか?
山富:僕は、自動運転車の研究をしていた時期があり、今の研究が落ち着いたら再び自動運転車の研究をしたいです。すでに道に沿って運転するところまでは実現できたので、「道を外れたら止まる」「障害物を避ける」ことのできるAIを実現するのが目標です。
日野:私は、どんなものにも応用できるAIをつくるのが目標です。例えば、「言語を話せるAI」と「自動運転車のAI」はまるで異なるため、それぞれに専用のAIが必要です。これでは人間らしくないですよね。人間って、一人でいろいろなことができてしまいます。この問題に現在取り組んでいます。
シャー:AIに求められている究極の姿は、人間と同じように「何にでも応用できること」です。しかし、そのような汎用型のAIを実現するのはなかなか難しいのです。世界中の研究者がさまざまな方向から攻めていますが、最終的な目標は同じです。
日野:実際に、企業もそのようなAIのエンジニアを求めています。
シアン:なるほど。鮫嶋さんが目指しているのも最終的にはそこなんですね。
鮫嶋:はい、これからもAIの研究に取り組んで学会に論文を発表したいと考えています。最終的には「世界の鮫嶋」になることが目標です!(笑)
シアン:皆さんの熱い気持ちが伝わりました。これからも頑張ってください!
※所属・学年は取材時の内容です。
(2022年1月28日更新)
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